大学院の課程の修了と学位授与とに関する法令

 最近,アカデミックな世界では常識であっても,一般には浸透していないことがあるということを実感していますので,その中の一つとして,大学院の課程の修了と学位授与とに関する法令について纏めてみます。

 先ず,最も基本となるのが,『学校教育法(昭和二十二年三月三十一日法律第二十六号)最終改正:平成二六年六月二七日法律第八八号』です。以下は電子政府の総合窓口 イーガブからの引用です。

================ (学校教育法 抜粋) =======================
第百四条  大学(第百八条第二項の大学(以下この条において「短期大学」という。)を除く。以下この条において同じ。)は、文部科学大臣の定めるところにより、大学を卒業した者に対し学士の学位を、大学院(専門職大学院を除く。)の課程を修了した者に対し修士又は博士の学位を、専門職大学院の課程を修了した者に対し文部科学大臣の定める学位を授与するものとする。
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 これによると,大学院の修士課程(または博士課程の前期課程)を修了すると,『修士』,博士課程(または博士課程の後期課程)を修了すると,『博士』の学位が授与されることになります。

 なお,最近出来た専門職大学院の課程を修了した場合の学位に関しては,『学位規則(昭和二十八年四月一日文部省令第九号)最終改正:平成二五年三月一一日文部科学省令第五号』に次の様に定められています。(イーガブからの引用)

================= (学位規則 抜粋) ========================
第五条の二  法第百四条第一項 に規定する文部科学大臣の定める学位は、次の表の上欄に掲げる区分に応じ、それぞれ同表の下欄に掲げるとおりとし、これらは専門職学位とする。
区分学位
専門職大学院の課程(次項以下の課程を除く。)を修了した者に授与する学位修士(専門職)
専門職大学院設置基準(平成十五年文部科学省令第十六号)第十八条第一項に規定する法科大学院の課程を修了した者に授与する学位法務博士(専門職)
専門職大学院設置基準第二十六条第一項に規定する教職大学院の課程を修了した者に授与する学位教職修士(専門職)
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 次に,大学院の課程の修了要件は,『大学院設置基準(昭和四十九年六月二十日文部省令第二十八号)最終改正:平成二六年一一月一四日文部科学省令第三四号』に明確に規定されています。少々長くなりますが,法令の条文は著作権法の適用除外の対象ですので,該当箇所を全てイーガブから引用します。

============== (大学院設置基準 抜粋) =====================
   第六章 課程の修了要件等

(修士課程の修了要件)
第十六条  修士課程の修了の要件は、大学院に二年(二年以外の標準修業年限を定める研究科、専攻又は学生の履修上の区分にあつては、当該標準修業年限)以上在学し、三十単位以上を修得し、かつ、必要な研究指導を受けた上、当該修士課程の目的に応じ、当該大学院の行う修士論文又は特定の課題についての研究の成果の審査及び試験に合格することとする。ただし、在学期間に関しては、優れた業績を上げた者については、大学院に一年以上在学すれば足りるものとする。

(博士課程の前期の課程の取扱い)
第十六条の二  第四条第四項の規定により修士課程として取り扱うものとする博士課程の前期の課程の修了の要件は、当該博士課程の目的を達成するために必要と認められる場合には、前条に規定する大学院の行う修士論文又は特定の課題についての研究の成果の審査及び試験に合格することに代えて、大学院が行う次に掲げる試験及び審査に合格することとすることができる。
一  専攻分野に関する高度の専門的知識及び能力並びに当該専攻分野に関連する分野の基礎的素養であつて当該前期の課程において修得し、又は涵養すべきものについての試験
二  博士論文に係る研究を主体的に遂行するために必要な能力であつて当該前期の課程において修得すべきものについての審査

(博士課程の修了要件)
第十七条  博士課程の修了の要件は、大学院に五年(五年を超える標準修業年限を定める研究科、専攻又は学生の履修上の区分にあつては、当該標準修業年限とし、修士課程(第三条第三項の規定により標準修業年限を一年以上二年未満とした修士課程を除く。以下この項において同じ。)に二年(二年を超える標準修業年限を定める研究科、専攻又は学生の履修上の区分にあつては、当該標準修業年限。以下この条本文において同じ。)以上在学し、当該課程を修了した者にあつては、当該課程における二年の在学期間を含む。)以上在学し、三十単位以上を修得し、かつ、必要な研究指導を受けた上、当該大学院の行う博士論文の審査及び試験に合格することとする。ただし、在学期間に関しては、優れた研究業績を上げた者については、大学院に三年(修士課程に二年以上在学し、当該課程を修了した者にあつては、当該課程における二年の在学期間を含む。)以上在学すれば足りるものとする。
2  第三条第三項の規定により標準修業年限を一年以上二年未満とした修士課程を修了した者及び第十六条ただし書の規定による在学期間をもつて修士課程を修了した者の博士課程の修了の要件については、前項中「五年(五年を超える標準修業年限を定める研究科、専攻又は学生の履修上の区分にあつては、当該標準修業年限とし、修士課程(第三条第三項の規定により標準修業年限を一年以上二年未満とした修士課程を除く。以下この項において同じ。)に二年(二年を超える標準修業年限を定める研究科、専攻又は学生の履修上の区分にあつては、当該標準修業年限。以下この条本文において同じ。)以上在学し、当該課程を修了した者にあつては、当該課程における二年の在学期間を含む。)」とあるのは「修士課程における在学期間に三年(第四条第三項ただし書の規定により博士課程の後期の課程について三年を超える標準修業年限を定める研究科、専攻又は学生の履修上の区分にあつては、当該標準修業年限)を加えた期間」と、「三年(修士課程に二年以上在学し、当該課程を修了した者にあつては、当該課程における二年の在学期間を含む。)」とあるのは「三年(第三条第三項の規定により標準修業年限を一年以上二年未満とした修士課程を修了した者にあつては、当該一年以上二年未満の期間を、第十六条ただし書の規定による在学期間をもつて修士課程を修了した者にあつては、当該課程における在学期間(二年を限度とする。)を含む。)」と読み替えて、同項の規定を適用する。
3  第一項及び前項の規定にかかわらず、修士の学位若しくは専門職学位(学位規則 (昭和二十八年文部省令第九号)第五条の二 に規定する専門職学位をいう。以下この項において同じ。)を有する者又は学校教育法施行規則 (昭和二十二年文部省令第十一号)第百五十六条 の規定により大学院への入学資格に関し修士の学位若しくは専門職学位を有する者と同等以上の学力があると認められた者が、博士課程の後期の課程に入学した場合の博士課程の修了の要件は、大学院(専門職大学院を除く。以下この項において同じ。)に三年(第四条第三項ただし書の規定により博士課程の後期の課程について三年を超える標準修業年限を定める研究科、専攻又は学生の履修上の区分にあつては、当該標準修業年限とし、専門職大学院設置基準 (平成十五年文部科学省令第十六号)第十八条第一項 の法科大学院の課程を修了した者にあつては、二年(第四条第三項ただし書の規定により博士課程の後期の課程について三年を超える標準修業年限を定める研究科、専攻又は学生の履修上の区分にあつては、当該標準修業年限から一年の期間を減じた期間)とする。)以上在学し、必要な研究指導を受けた上、当該大学院の行う博士論文の審査及び試験に合格することとする。ただし、在学期間に関しては、優れた研究業績を上げた者については、大学院に一年(第三条第三項の規定により標準修業年限を一年以上二年未満とした修士課程を修了した者及び専門職大学院設置基準第二条第二項 の規定により標準修業年限を一年以上二年未満とした専門職学位課程を修了した者にあつては、三年から当該一年以上二年未満の期間を減じた期間とし、第十六条ただし書の規定による在学期間をもつて修士課程を修了した者にあつては、三年から当該課程における在学期間(二年を限度とする。)を減じた期間とする。)以上在学すれば足りるものとする。
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 要するに,所要の年限迄在学して所要の単位を修得しただけでは,修了出来ないということです。

 博士課程の前期課程と後期課程とを繋げて一貫制を敷いている学校もあるため,修士課程(または博士課程の前期課程)の修了要件は「修士論文又は特定の課題についての研究の成果の審査及び試験に合格すること」となっています。

 それに対して,博士課程(または博士課程の後期課程)の修了要件は「博士論文の審査及び試験に合格すること」と限定されています。

 なお,博士の学位は容易に授与されるものではないので,履歴書の学歴欄に,博士課程(または博士課程の後期課程)に関して,『単位修得済み退学』または『満期退学』と書かれていても,大学の中途退学とは全く意味が異なり,立派な経歴です。何故ならばそれは,修士課程(または博士課程の前期課程)よりも専門分野に関して深く掘り下げて,更に研鑽を積んだ証しだからです。

 私の場合,6年前に現在の勤務先に移籍するに当たって,人事課から最終学歴の修了証明書の提出を求められ,博士課程後期課程の修了証明書の発行を母校に申請しに行きましたが,これは上述の法令に従って,博士の学位が授与されている者にしか発行してもらえないのは言うまでもありません。

by 神保 雅人


(追記)

 大学や大学院を開設する場合に個々の教員が受ける教員組織審査では,履歴及び業績に依って,科目担当及び職位の妥当性に関して審査が行われます。文部科学省のWebサイトにある『大学の設置等に係る提出書類の作成の手引き(平成27年度改訂版)』のp.125には履歴書の書き方がありますが,そこには『博士課程において所定の単位を取得し博士の学位を授与されないまま退学した場合には,「博士課程単位取得後退学」と記入してください。』とあります。


(追記2)

 上の追記でリンク切れが生じましたので,最新情報に更新します。
大学の設置等に係る提出書類の作成の手引(平成28年度改訂版)』のp.125をご覧ください。

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